2014-04-25

② one of these days in April 2014

信号の向こう側にダークブラウンの髪とピンクのバッグパックが見えた。
「フレディーカ! 」 
彼女はわたしを見つけると、自分の顔の前で両手を振った。わたしは小走りで駆け寄り、彼女の小さな肩を抱き寄せ、頬と頬を合わせた。
彼女の目は4月23日の空よりも青い。そして、相変わらず美人だ。

……なんかステキなラブストーリー、みたいですけど、違います。
イタリアからやってきたフレディーカはBob Dylanのライヴをキョーレツに追いかけましている女性。世界中、どこにでも行っている(みたい)。1990年代の後半ぐらいからコンサート会場の近くでその姿を見かけるようになった。
わたしが彼女と話すようになったのは2005年。シカゴのオーディトリアム・シアターで。
大先生はその会場でMerle Haggardをオープニング・アクトに迎えた5夜連続のショウを行った。最終公演だけ、どうしてもチケットを入手することができなくて途方に暮れるわたしにフレディーカがチケットをくれたのだ。2枚持っているから1枚、あげるといってくれた。

彼女はいつもお昼ぐらいから会場の入り口にいて、チケットが余っている人、行けなくなってしまった人たちを待ち受けている。でも決して自分からは声をかけない。そして金品やなにかとトレードしたりもしない。いうなれば(チケットの)「施し」を受けるわけなのだが、施しを受けていることもちゃんと彼女は理解もし感謝を忘れない。イタリアから外国(主にアメリカ)へやってきて、Bob Dylan のコンサートが観れなくても(わたしのように)くよくよしたり、だれかを憎んだり、逆恨みをしたりしない。当然のことだけどね。今回も九州公演だけは観れなかったそうだ。そういいながら泣きマネをした。

わたしが彼女のことをとても好きになったのは、客席で熟睡していた姿を見たからだ。Bob Dylanが登場する直前に入場してきて、演奏がはじまる直前に就寝した。そして、とうとうアンコールが終わるまで目醒めることはなかった。日中からずっとと外気に触れ、たぶんとても疲れていたのだと思う。その寝顔はとても幸せそうだった。





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